「骨盤がゆがむ」とはどういう状態?症状や原因、治し方について
良い姿勢をしているつもりでも、ちょっとした日々の積み重ねで骨盤がゆがむことがあります。カバンをいつも右で持つ、左側を向いて寝ている、足を組むことが多い、そんなふとした癖が骨盤の歪みを招きます。
この記事では、骨盤の“ゆがみ”や原因、症状、治し方についてご紹介しています。
監修者:西 純一先生(柔道整復師)
- この記事の目次
骨盤がゆがむとどんな症状・悪影響がある?
骨盤の役割
骨盤はみなさんがご存知のとおり、ちょうどおしりの部分にある身体の中心にある骨です。「仙骨(せんこつ)」と「尾骨(びこつ)」、「寛骨(かんこつ)」という3つの骨が組み合わさってできています。
身体の中心にある骨盤は、上半身と下半身のバランスを取るための“要”となる部分ですが、骨盤は上半身をささえ、さらには足元からの衝撃を受けたり・・・毎日酷使されています。また、骨盤には内臓をまもる役目もあります。
骨盤が”ゆがむ”と出てくる症状
身体の中心となる骨である骨盤がゆがむと、からだに様々な異常が起きると考えられます。下記が骨盤が歪むことによって出てくる症状です。
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上半身の痛み、こり(腰痛や肩こり)
骨盤が歪むと、前後左右筋肉のバランスが悪くなり、負担のかかった筋肉は疲労して血行障害を起こしてしまいます。その結果、慢性的な腰痛や肩こりが出やすくなります。
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足の痛み(股関節痛、ひざ痛、外反母趾)
骨盤がゆがめば、股関節でつながる足もゆがんでしまい、地面からの衝撃を上手く吸収することができずに関節に負担がかかりやすくなるのです。すると、股関節通やひざ痛、外反母趾など足にさまざまな症状が現れることが考えられます。
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便秘や頻尿
骨盤は内臓をささえる役目もありますがこの骨盤がゆがんでしまうと、内臓が圧迫されてしまいます。すると便秘になってしまうことがあります。
また、膀胱が圧迫されれば頻尿になってしまうこともありますし、特に産後の女性は骨盤底筋がゆるむため、尿漏れで悩まれる方が非常に多いです。
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冷え性、むくみ、太りやすくなる
内臓が圧迫されるとその周辺にある血管やリンパなどの周辺組織が圧迫されることになるので血液の流れが悪くなり滞りやすくなります。
すると冷え性やむくみ、下半身太りがおこりやすくなります。また、血液が滞りなく全身にいきわたらなければ代謝が落ちてしまうため、脂肪が付きやすくなり、太りやすい体質になってしまいます。
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かみ合わせが悪くなる
骨盤からは遠い、『口腔環境』にも影響を及ぼすことがあります。骨盤は全身のバランスををとる役目を担っているため、骨盤のゆがみがから上あごと下あごの歪みがおこり、かみ合わせが悪くなってしまうこともあります。
顎は筋肉と靭帯でぶら下がっているだけの状態なので、連動している骨盤が傾けば顎も傾き、傾いたまま開け閉めすれば顎の関節や筋肉に負担がかかります。
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自律神経の乱れ
背骨がゆがむと『自律神経』が乱れやすくなります。自律神経は、背骨にそって一直線にとおっている神経のことで、呼吸や体温、脈拍、消火、免疫力、ホルモンなど身体の機能の働きを調整している大切な神経です。
そして、自律神経の中でも、とくに『交感神経』に悪影響を及ぼすと、疲れやすくなったり、風邪をひきやすくなったりすることがあります。
骨盤のゆがみ方による症状・身体への影響の違い
『骨盤のゆがみ』といっても、いくつかタイプがあります。左右どちらかに傾くタイプや、前傾タイプ、後傾タイプ、骨盤が開いているタイプや捻じれているタイプなどさまざまです。
自分はどのタイプなのか知りたくなりますが、実際には、「コレ」というよりは複合的に存在する方が多くいます。ここではこのような、骨盤のゆがみ方ごとに症状や体に出てくる悪影響のちがいをご紹介します。
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骨盤が前傾している場合は、ぽっこりお腹に!
骨盤が前傾している場合は、腰が反るのでお腹がぽっこり出たりおしりが突き出た状態になりやすいです。これは骨盤を前に傾ける筋肉が骨盤を後ろに維持する力より強くなってしまったときに起こると考えられます。
正常状態であれば、仰向けに寝たときに床と背中に手のひら1枚くらいが入るか入らないかくらいのスペースができますが、骨盤前傾の場合は、スムーズに手が入るどころか、拳にしても余裕があることもあります。
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骨盤が後傾している場合は、おしりと胸が垂れやすく老化がすすむ!
骨盤後傾になると下っ腹が出て猫背になりやすくなります。猫背になると、お尻も胸も垂れやすく、また目線が下がって、外見の見た目年齢が上がりやすくなるデメリットも…。
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骨盤が開いている場合は、将来的に膝痛もちになるかも…
骨盤が開くタイプは股関節が外に向いてしまいO脚になります。O脚を放置する方も多いですがO脚は、想像よりもはるかに膝に負担がかかります。
階段の上り下りや、立ったり、座ったりするたびに膝が外に開く力がかかるので、治さなければ膝の痛みがどんどんと増してしまい、しまいには歩くこと、動くことも億劫になってしまうこともあります。
また、女性は『出産』するための体の仕組みとして、男性よりも骨盤が開きやすい仕組みになっています。
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骨盤が左右に傾いている場合は、からだへの負担が大きい!…
骨盤が左右に傾くタイプは代償作用(別の器官がその機能を代行すること)で背骨がゆがみ、姿勢性側弯(姿勢によって、脊柱が側方へねじり曲がった状態)になりやすいです。
正面から写真を撮った時に身体や顔が傾いてみえてしまったり、左右差があるということは、左右どちらかに体重がかかりやすくなっている証拠なので、その負担が積み重なると腰痛だけでなく膝痛や股関節痛などを引き起こしやすくなります。
骨盤のゆがみの原因となる生活習慣について
骨盤のゆがみは、日ごろの習慣やくせが原因で出てきてしまいます。
また、すでに整骨院での骨盤矯正を受けているような方もこれらの癖があると、骨盤を調整してもまたすぐにゆがみが出てしまう可能性があります。もしご自身に該当するものがあれば1つずつ減らしていきましょう。
- ●足を組む
- ●カバンを片方の肩ばかりにかけている
- ●いつも重い荷物を持っている
- ●ガニ股、内股で歩いている
- ●寝るときは決まった方向を下にして寝ている
- ●運動習慣がない
- ●猫背である
- ●反り腰である
- ●ヒールの高い靴ばかりを履いている
悪い姿勢を続けていると、姿勢保持筋である『インナーマッスル』が低下してしまいます。これが骨盤のゆがみと大きく関係しています。
骨盤のゆがみが気になる場合は整骨院で骨盤矯正を!
ゆがみが少しでも気になるときは、整骨院や接骨院などの専門施設で骨盤矯正や姿勢矯正をうけることが将来、腰痛やひざの痛みなどの悩みを軽減するための得策です。
骨盤矯正でおこなわれる施術について
例えば当院では『骨盤矯正』、『産後骨盤』、『猫背矯正』などのメニューを用意し、ストレッチをかけながらバランスを整える施術をおこなっています。いわゆる「バキバキ」と激しく骨をうごかす方法ではありません。
また一般的には、マッサージや押す、叩くなどの『手技』でゆがみを調整したり、緊張した筋肉をゆるめたり機械をつかって関節そのものにアプローチするなど方法はさまざまです。施設によって方法はさまざまですが、一人ひとりの状態にあわせた方法を選択してくれると思います。
改善にかかる期間
年齢や症状、骨盤のゆがみ方によって改善に必要な期間は変わります。骨盤矯正を一度受けるだけでも、骨格の変化は実感できますが、ゆがみを取った状態で安定させるには1ヶ月~3ヶ月ほどかかります。
日ごろの悪い癖が一度の施術で全て治るわけではないので、患者様自身も姿勢の見直しやストレッチを行う事で矯正の効果を上げ改善につながります。
費用の目安は?基本は保険がつかえない。
ゆがみといっても体に異常がなければ病気ではないので、保険適用で骨盤矯正がうけられる場合はほとんどありません。そのため、施術院によって料金はさまざまです。
施設によっては10,000円ほどかかるところもあるようですが、施術内容も一律ではないため、どんな内容の施術をして、どれくらいの通院が必要で、どれくらいの改善が見込めるかを、あらかじめご自身で聞いておくと安心ですね。
まとめ
骨盤のゆがみを放置すると、痛みや見た目が変わってしまうなどの問題だけでなく、さまざまな関節の「変形」にもつながります。 関節が変形の変形は、不可逆性なのでいちど形が変わってしまうと治せなくなってしまいます。お悩みの方は是非1度お近くの治療院や医療機関にご相談下さい。
また、ゆがみの原因のほとんどが日ごろの悪い姿勢によるインナーマッスルの低下と大きくかかわっています。とくに近年はスマートフォンやパソコンの長時間使用によって知らない間に猫背になっていたり悪い姿勢を続けている方も多くいらっしゃると思います。1時間に1回は休憩を入れ、背筋を整えるようにしていきたいですね。